70歳の村上春樹

Posted on

最近、ネットなどをみていると、村上春樹氏の話題を目にする機会が多くなりました。小説世界には疎いものではありますが、昔村上氏はメディア特に日本のメディアには出ないことにしていると、聞いたことがあります。どうしたのでしょうか。もちろん、急にメディアに登場するようになったことについて、何かクレームをつける。そのようなことではありません。そもそもわたくしのような人間のクレームなどに何の意味もないことは、本人がよくわかっています。

それにしても、なぜ今なのか、という疑問は残ります。わたくしの根拠もない感じではありますが、氏がそろそろ小説家としてのおしまいを考えているのではないか、です。最近のメディアに登場するきっかけとなった、早稲田大学での村上センター創立などは、この感じを一層強めるものだから。

これもわたくしの勝手な感じ方ですが、同じ芸術家でも、その芸術分野により活動寿命のようなものがあるのではないでしょうか。例外が多いのは承知ですが、わたくしの考えている芸術分野での活動寿命は以下となります。

・音楽家特に作曲家
モーツァルトなどは例外的に早いのかもしれませんが、全般的な印象としては、作曲家は長生きできない感じをしています。武満徹氏にしても、まだまだ色々な曲を作って欲しいと願っていた人は多いのではないでしょうか。そして単に曲を作るだけでなく、文章を作る力も優れている作曲家の人も多い気がします。大江健三郎氏も書いているように、武満氏が今の世の中で生きていたとしたら、どのような発言をするのか。とても残念なことです。
→ヨハン・セバスチャン・バッハ:65歳
→ベートーベン:57歳
→ブラームス:64歳
→チャイコフスキー:53歳
→マーラー:51歳
特にわたくしの説を補強するような作曲家を選んだ訳ではありません。頭に浮かんだ作曲家を調べてみた結果をただ書いてみただけ。わたくし自身でもチャイコフスキーやマーラーがこれほど早くになくなったのかと、びっくりしているくらいですから。

・小説家
小説家はちょっと難しいところがあります。自殺というケースがありますので。とりあえず今回は、奇妙な言い方とはなりますが、自然死だけで考えてみます。
→夏目漱石:49歳
→森鴎外:70歳
→吉川英治:70歳
→吉行淳之介:70歳
→藤沢周平:69歳
→ウンベルト・エーコ:84歳
夏目漱石が意外と若死になのについては、驚く人も多いのではないかと思います。あれだけの作品を書きながら。実際、夏目漱石氏の作家活動とは10年程度のものです。本当に集中した小説家人生です。他の作家については自分が興味があるところを取り上げてみました。全く客観性のない話ではありますが、やはり70歳ラインというのは気になるものです。別の分野でも構いませんが、自分と同じような職種で働いている人の活動寿命は、やはり気になるものでは。

・絵画・彫刻
この分野でも自殺する人が多いので難しいところ。例えば1950年代のアメリカ表現主義の画家たち。戦後の美術の新しい開拓者たちですが、大げさではなく、ほとんどのメンバーが自殺あるいは自殺的な行為で死んでいます。機会があれば、絵画表現と自殺との関係について考察したいと思っているのですが、まだ実現しそうもありません。自殺という話を除くと、この分野で活躍している人は長生きな感じがします。実際はどうなのでしょうか。
→レオナルド・ダ・ヴィンチ:67歳
→ミケランジェロ:88歳
→ラファエロ:37歳
→モネ:86歳
→マティス:84歳
→ピカソ:91歳
→葛飾北斎:88歳
もちろん、作曲家でも小説家でも長い生きした人はいますが、それらの人はある種の例外で、やはり絵画や彫刻の世界では、誰もが長生きする訳でもありませんが、長生きの人が多いのはまさに事実です。

何も長く生きればそれだけ価値があるとは、わたくしがここで主張したい訳でもありません。ただ、わたくしのような表面的でないちゃんとした研究。人の表現方式とその人の生き方的なことが、明確になるのであれば、それは多くの人々の生きる指針にもなるのではないか。

ここで再び70歳の村上春樹。先にも書きましたように、わたくしにはこの動きの動機的なものについては、何もわかりません。しかし、自らの年齢へ思いが、この行動の背景にあるのは間違いないと思います。では具体的にはどのような行動を取ることになるのか。今の社会の現状に対して、まともなこと一つ言える人がほとんどいなくなってしまったこと。大江健三郎氏の社会への発言に対して、批判も賛同もたくさんありました。しかし、議論の明らかなきっかけを提供していたことについては間違いありません。その大江氏が小説終了宣言をしてから、随分と時が経過してしまい、次の作品も多分望むことは不可能ではないか。

村上春樹氏の今後の活動に期待はするのですけれど、わたくしたちも、今の自分の年齢を考えて、次の活動の方向性を決める必要があるのでは。偉大なる芸術家のその人生の寿命を知ることで、なお一層、その気持ちが強まるのを感じるのは、多分わたくしだけではないでしょう。

(Visited 88 times, 1 visits today)