武蔵の国うどん紀行

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私ごとですが、最近東京と埼玉の県境にある地域に引っ越してきました。引っ越してくると自転車で周りの近辺を走って確認してみる。私の個人的な楽しみの一つです。自転車で走っていて感じることは、それぞれの地域で飲食店などが違っていることです。今度の地域では、山田うどんの看板を見る機会が増えました。久しぶりのことです。

山田うどん?って思う人も多いことでしょう。全国展開している飲食店チェーンと異なり、埼玉県あたりを中心として展開している地域限定のうどん店チェーンであり、特に道路沿いにあるので、駅前にもあるわけでなく目にしていない人も多いかもしれませんね。

どんな人が経営者かは知りませんが、目の付け所が鋭い人だと思います。関西はうどんで関東はそばなどといっている食通の人は多いですが、何が食通なのかよくわかりません。単に頭で考えている人だけで、本当に食べることを楽しんでいるのかどうか。あるいは食べ物の歴史的な広がりを知っているのかどうか。

埼玉というよりか、武蔵野の呼ばれる地域は昔からうどん文化が栄えていたところなのです。そのような地域限定でうどん屋チェーン店を始める。今では当然のことのようですが、私の記憶にある限りでは、変なことを始めたな、というものです。

先に武蔵野のうどん文化と書きました。具体的にはどのようなことでしょうか。うどんといえば、各家庭で作るのが普通でした。手打ちうどんです。あまりにも身近な存在なので、チェーン店として成功するのかなと、私は疑問に思ったわけです。

創業者に見る目があると書いたのは、時代の変化を読みとっていたから。手打ちうどんを家庭で作る時代がそろそろ過ぎ去ろうとした時に、山田うどんが出現したような記憶があります。私の実家でも祖母は手打ちうどんを作っていましたが、母親はもう作りませんでした。まあ栃木県出身ということも理由ではありましょうが。

すでになくなっている父親。滅多に外食などしない人でしたが、この山田うどんにはよくいっていました。山田うどんに懐かしさを感じたいたのかもしれません。面白いもので、父親などのようにうどんに対してのある種の思い入れがある人が減ってきたのでしょうか、最近は山田うどんも山田うどん食堂になって、うどんだけではない業態に広げようとしているようです。

本記事は別段山田うどんを宣伝する目的ではありませんので、そろそろ本題である武蔵野のうどん文化について話を進めていくことにしましょう。*山田うどんのうどんは武蔵野うどんではないという評判もありますので、ご注意願います。もちろんそれで美味くないということではありません。

武蔵野とは武蔵野台地に広がる区域のことです。うどんに関しては、特に多摩地域の北部(小平、東村山など)から埼玉県の川越あたりまで。さらに北の熊谷も含まれます。私の実家は多摩地区西部ですのでうどん周辺地域ということになるでしょう。

なぜこの地域でうどんが盛んなのか。それは武蔵野台地の特徴からきています。武蔵野地域を流れる川の特徴は何か、ご存知ですか。都心の川と異なって護岸工事がほとんどなされていないか、かなり低いものです。というのも降った雨水はこの台地にすぐに吸い込まれてしまうので、川が増水することが滅多にないからなのです。そしてほとんどの川は湧水を水源地にしているのも、この台地の特徴からなのです。

このような台地の土壌では、米を育てる水田耕作はできません。水をためておくことが難しいので。米の代わりに農家が力を入れたのは小麦生産。乾燥した土地でも育つからです。この小麦を使ってうどんを作る。武蔵野うどん文化が生まれ育った理由です。

このうどんの作り方については正直よくわかりません。祖母が作っているのをただ漠然と眺めていただけだから。ただその作り方で記憶に強く残っているものがあります。小麦をこねたあと、その上に全身で乗って足で踏み固めていたことです。ものの本によると、これはうどんにコシが出るようにするためだとのこと。まさに文化として祖母にもちゃんと伝わっていたわけです。

食べる方については、色々なことが記憶に残っています。私にはこのうどんの食べ方は2種類あります。一つは武蔵野うどんの標準的?な食べ方。もう一つは育った地域(山間部の村)に特有の食べ方です。まずは一般的な武蔵野うどんの食べ方について。

武蔵野うどんの基本の食べ方はつけ麺です。つゆとうどんが別々にあって、うどんを箸でひとつかみして、その都度つゆにつけて食べます。そばと同じような食べ方ですが、違うのはつゆが温かいところか。地域によっても異なるとは思いますが。食べ方で面白いのは、うどんが結婚式や葬式あるいは村の会合などで必ず出されることです。この地域の特色の一つでしょう。仕出し屋で作るのですが、うどんとつゆが一つのパックとなって提供されます。これについては自分としてはあまり美味しいとは思いませんでした。

もう一つの食べ方は煮込みうどんです。野菜がたっぷりと入った鍋にうどんを入れて煮込みます。私の子供の頃は囲炉裏で煮込んでいました。このような食べ方は、武蔵野うどんというよりも山梨のほうとうに似たものです。一山越えるとすぐに塩山などの山梨地域となる場所でしたので、その影響を受けてこのような食べ方になったのかもしれません。

今回は武蔵野うどんの概略的なところを話しましたが、次回機会があれば、実際に今に残る武蔵野うどんを食べてみた感想も書いてみたいと思います。さてどこが良いでしょうか。これからちょっと調べてみることにしましょう。

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