江戸を旅する:名所江戸百景より

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東京は再生の都市です。関東大震災や大戦での米国による無差別爆弾攻撃で崩壊しながら、復興を繰り返し、しぶとく生き残っています。そして再生がまさにくせになったかのように、いつまでも作り直しを繰り返しています。現在では東京オリンピックに向けてか、新しいビルがあちらこちらで建設中です。

再生都市東京ですが、興味深いのは、これほど再生を繰り返しながらも江戸の名残があることです。どんな大きな災害でも、地形を変えることまではできないようです。この前の地震のように大きな津波がくるとかは別として。この地形がまずは江戸を思い起こさせるのでしょう。

引っ越した関係で、地下鉄である丸ノ内線を利用するようになりました。始発駅の池袋から乗車。二駅目が茗荷谷です。お茶の水女子大学がある場所です。名前の通り、江戸時代にはミョウガを育てていた谷間の場所で、電車はちょうどこの谷間の底を走ることになります。江戸時代ではありませんが、漱石の小説にも登場してくる場所で、その小説には長い階段を降って谷を超える、と書いてあります。谷底から上へ向かっていく長い階段があり、電車から時々その長い階段を登っている人影を見ることもあります。もちろん漱石の小説に書いてある階段ではないでしょうが。

この電車に乗りながらふと浮かんだ考えは、江戸を旅してみたい、です。もちろんタイムスリップでもしなければ過去の江戸を旅することはできません。しかし茗荷谷の例からもわかるように、現在の風景からでも地形を頼りにして江戸を想像の中だけでも蘇らせることはできるのではないでしょうか。

ではどうやって。その具体的な方法とは。そんなことを考えながらいたところ、ヒントを見つけました。歌川(安藤)広重の「名所江戸百景」です。名所というのは、大概は地形的にも特色があるものです。ですから、このシリーズ物の風景画が役立つと考えました。

江戸への旅はまだ私の中での企画段階にしかすぎませんが、今回はこの図版を眺めながら計画を考えてみたいと思います。

そもそもこの名所江戸百景とはどのようなものなのでしょうか。江戸幕府が終わろうとする幕末に刊行されたこの風景画シリーズは文字通り、江戸の名所を紹介するものです。当時は大変な人気だったらしく、刷り増し(現在の本で言えば増刷)が1万〜2万だということです。現在でもこれだけの増刷はなかなかないことですので、その人気ぶりが伺えます。

国内だけで有名だというわけでもなく、海外の画家にも大きな影響を与えたのが、このシリーズの特色です。歌川広重は現在で言う所の国際的有名画家なのです。特にゴッホなどは影響を強く受けて、このシリーズの何点かを模写までしています。

さて、この図版をみながら、どこへ行きましょうか。あまり都心には行かないのですが、隅田川付近の会社にはよくいくことがありますので、最初はそのあたりから開始してみたいと思います。

この風景がシリーズは季節ごとの4部に別れいます。春夏秋冬です。この春の部にあるのが、永代橋佃島です。会社勤めをしていた時などは昼休みどきにはよく行っていた場所ですが、その場所が絵になっているとは、意外なところです。

■永代橋佃島

名所江戸百景より、大川(現在の隅田川)の橋である永代橋から佃島の眺めです。東西線で言うと、茅場町駅を下車に永代橋通りを門前仲町方面に歩いていくと、5、6分でこの橋に到着します。この橋から川下を眺めると右に見えるのが佃島です。現在は高層マンションがいくつか建っていますが、地形的にはこの絵とそれほど変わってはいません。

こちらが現在の風景です。このこの記事を書く前に撮影したものですが、広重と同じような視点で撮影しているところが面白いところです。右側が佃島。ちなみに永代橋ですが、江戸時代はここから罪人の島流しの船が出発したとのことです。永代(永久)に戻ってこられないことで、このような橋の名前をなったとのこと。単なる風景ではなく物語的なところもあるのが、江戸風景の興味深いところです。

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